頭痛予防のための「陰翳礼讃」の空間デザイン

明るさと頭痛

私は自律神経失調症の発症後、とにかく、明るい部屋にいることが、辛くなりました。

なぜか。

明るい場所に長くいると、かなり高い確率で、その後頭痛が起き、吐き気がしてくるのです\^o^/

こんな状態だから、谷崎潤一郎が「陰翳礼讃」で論じた陰や暗がりへの嗜好には、すごく同意できるものがあります。

自律神経失調症や頭痛(特に偏頭痛)を患う人にとって、谷崎の言う陰翳を意識した生活空間デザインは、大きな救いとなるかもしれません。

「トイレ」ではなく、「厠」が良い

私は、京都や奈良の寺院へ行って、昔風の、うすぐらい、そうしてしかも掃除の行き届いた厠へ案内される毎に、つく/″\日本建築の有難みを感じる。茶の間もいゝにはいゝけれども、日本の厠は実に精神が休まるように出来ている。それらは必ず母屋から離れて、青葉の匂や苔の匂のして来るような植え込みの蔭に設けてあり、廊下を伝わって行くのであるが、その薄暗い光線の中にうずくまって、ほんのり明るい障子の反射を受けながら瞑想に耽り、または窓外の庭のけしきを眺める気持ちは、何とも云えない。

陰翳礼讃:谷崎潤一郎

ああ、この感じ。お分りいただけるでしょうか。こんな薄暗く静謐な厠を想像するだけで、頭痛がすっと引いていくような、そんな効果すら感じます。

きっと谷崎潤一郎には、頭痛など無かったに違いありません。同時代の作家の芥川龍之介が偏頭痛持ちだったのは、有名な話ですが。

偏頭痛は、脳の三叉神経の末端から、特定の神経伝達物質が分泌されて血管を拡張させた結果、発生すると考えられています。ただ、そのきっかけは、強い光や人ごみ、アルコール、大きな音、ある特定の匂い、雨、ストレスなど、人それぞれです。なので、そういった原因を取り除くことが重要なのです。
(偏頭痛の誘発因子については「片頭痛の誘発因子:頭痛大学」が詳しいです)

特に、私の場合、頭痛専門医に通って治療しているのですが、その過程で、明るさが頭痛を引き起こしているらしいことが、分かってきたのです。

また、そうでなくとも、偏頭痛患者は「光過敏」と「音過敏」を伴うことが多いので、配慮が必要になります。

そこで、厠の話に戻りますが、古くからの日本家屋の「厠」というのは、現代的な意味での「トイレ」以上に、使う人の心が落ち着くような空間を志向したものになっていました。

その空間デザイン志向の肝は3つです。陰翳の三原則とでも名付けましょう。

陰翳の三原則
1.薄暗いこと
2.清潔であること
3.静かであること

繰り返して云うが、或る程度の薄暗さと、徹底的に清潔であることと、蚊の呻りさえ耳につくような静かさとが、必須の条件なのである。私はそう云う厠にあって、しと/\と降る雨の音を聴くのを好む。

陰翳礼讃:谷崎潤一郎

清潔で、静かで、薄暗いこと。それが、心を落ち着けるための、理想の厠です。

ところで、自分の体の外ではなく、体の中の感覚に注意を向け、味わうことで、精神の落ち着きが得られると言われています。ヨガをやっている人なら、聞いたことがあるし、またシャバーサナなどで、実感したこともあるでしょう。

厠で便を足す(=体の中の感覚に注意を向ける)ことは、ヨガと似た行為とも言えますね。

このように、厠という空間は、そこを使う人の神経の興奮を効果的に和らげるように、デザインされていました。そして、そのデザイン志向である陰翳の三原則が応用できるのは、厠だけではありません。

陰翳の三原則を取り入れることで、頭痛に優しい部屋が、実現できるのです。

>>次ページ「陰翳のある空間の実現」へ

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