頭痛予防のための「陰翳礼讃」の空間デザイン

陰翳のある空間の実現

具体的に、どうすれば、陰翳の三原則を応用した、頭痛に優しい空間を作ることができるのでしょうか。
三原則を一つ一つ見ていきましょう。

清潔であること

これについては、まずは徹底的に掃除をしましょう。窓のサッシや、棚の裏、ベッドの下など、隠れているところも全てです。できれば、水拭きで。また、そもそも、家具やものが多いと汚れも増えるので、それらは少ない方が良いです。シンプルな部屋を目指しましょう。

「部屋の掃除は、心の掃除」というのは、禅の考え方ですが、実際やって見ると、汚れているところが無いという安心感が、神経の興奮を抑えてくれます。

そしてもう一つ、空気の清潔さが重要です。なので、空気の流れを停滞させないような配慮を行います。

先の厠の例でもそうですが、閉め切った空間では、空気が清潔にはなりません。可能な限り、部屋の外気交換がなされるような工夫をしましょう。より大きな空間を空気が移動するイメージです。窓は、可能であれば、寒かったり、暑かったりしない程度に開けた方が良いです。

静かであること

これは、無音を指しているわけではありません。しとしとと降る雨の音、虫の音、鳥の声が弱められて聞こえるような、自然音を取り入れた静けさを指しているのです。言うまでもないですが、適度な自然音は、心を安らげる働きがあります。
閑さや 岩にしみ入る 蝉の声の静けさです。

薄暗いこと

これが一番難しいです。なにせ、「陰翳礼讃」のメインテーマである陰翳ですからね。谷崎潤一郎も、陰翳のデザインは天才のなせる技だと述べています。

種明かしをすれば、畢竟それは陰影の魔法であって、もし隅々に作られている蔭を追い除けてしまったら、忽焉としてその床の間はたゞの空白にきするのである。われらの祖先の天才は、虚無の空間を任意に遮蔽して自ら生ずる陰翳の世界に、いかなる壁画や装飾にも優る幽玄味を持たせたのである。これは簡単な技巧のようであって、実は中々容易ではない。

陰翳礼讃:谷崎潤一郎

伝統的な日本座敷のような空間を作るのは難しいですが、まず念頭におくべきは、奇をてらわず、シンプルな空間を志向すると言うことでしょう。

なぜなら、そこにはこれと云う特別なしつらえがあるのではない。要するにたゞ清楚な木材と清楚な壁とを以って一つの凹んだ空間を仕切り、そこへ引き入れられた光線が凹みの此処彼処へ朦朧たる隈を生むようにする。

陰翳礼讃:谷崎潤一郎

次に、光の取り入れ方です。
自然光を取り入れて、人工的な明かりをできるだけ用いないのが好ましいです。自然光についても、強い光を直接取り込むのではなく、弱めて取り入れる仕組みがあると理想的です。私も、朝外に出て急に強い日の光を浴びると頭痛が起きるので、自然光と言えども注意しています。

谷崎は、障子の持つ効果を高く評価しています。

分けても私は、書院の障子のしろ/″\としたほの明るさには、ついその前に立ち止まって時の移るのを忘れるのである。元来書院と云うものは、昔はその名の示す如く彼処で書見をするためにあゝ云う窓を設けたのが、いつしか床の間の明り取りとなったのであろうが、多くの場合、それは明り取りと言うよりも、むしろ側面から射して来る外光を一旦障子の紙で濾過して、適当に弱める働きをしている。

陰翳礼讃:谷崎潤一郎

ただ、さすがに現代日本の家で、和室でも無いのに障子を積極的に用いるのは難しいでしょう。なので、昼間はできれば襞の無い薄手のカーテンなどを窓に用いるのが、理想的です。薄すぎず、厚すぎず、そして見た目が煩く無いものを選ぶべきですね。

最後に、昔と違って、人口的な明かり=ライトを用いないのも難しいですよね。
次ページでは、陰翳礼讃のライティングについて、説明しましょう。

>>次ページ「頭痛を予防するライティング」へ

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